設計事務所との契約について、重要事項や契約書の一般的な内容
建築物の設計・施工について主に契約面についてお話ししたいと思います。お客様が設計事務所と契約する際に参考になればと思います。
最初に設計事務所とそれ以外(ハウスメーカー、工務店など)の違いについて説明したいと思います。一般的に建築物の設計、工事監理・建築工事の契約は大きく分けて2つのケースがあると思います。
①「設計事務所」
建築主は設計、工事監理と建築工事をそれぞれ別の会社と契約するケースです。
設計監理業務委託契約 | 設計事務所と契約 |
---|---|
建築工事請負契約 | 施工会社と契約 |
お客様は2社と契約を結びます。弊社は設計事務所ですので、こちらに該当します。施工会社は設計完了後に決定します。建築主が施工会社を決めることが可能です。(施工能力のある会社に限る)
②「ハウスメーカー、工務店」
建築主は設計、工事監理、建築工事をすべて同じ会社と契約するケースです。
建築工事請負契約 | 施工会社と契約(設計・監理含む) |
---|
お客様は1社と契約を結びます。設計と監理は工事請負契約を結んだハウスメーカー、工務店が基本的に自社で行います。つまり、施工会社が設計事務所を兼ねる会社ということになります。
お客様が契約するときに注意するポイント
一定規模以上の建築物の設計・工事監理の業務は、都道府県知事の登録を受けた「建築士事務所」でなければ行うことができません。上記①②いずれであっても登録の受けた事業者であることを確認しましょう。
建築士法に定められた手順で契約を結ぶ必要があります。延べ面積により変わりますが、重要事項説明、書面による契約の締結、建築士であることの確認、などが定められています。
設計事務所の業務の進め方について
弊社は建築士事務所ですので、施工工事との関係を示したのが上記になります。
設計事務所(設計者)は設計完了後に建設会社に図面を渡して建築工事を行います。工事中は工事管理という形で施工のチェックを行います。建設会社ではなく、設計者が第3者という立場で工事監理を行うことで図面通りに工事が行われるように努めることができます。
契約関連書類について
弊社では公的機関である「日本建築士会連合会」を含む四協会が制作した(日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、日本建設業連合会)契約書類を使用しています。契約書類は各事務所で独自に制定することができますが、信頼性および各種法律に適合した契約を結ぶ必要があるという観点から使用しています。
契約には全部で3種類の書類があります。
設計監理業務委託契約 約款 |
重要事項説明書 |
設計監理業務委託契約書 |
順番に説明したいと思います。
設計監理業務委託契約 約款
契約書における取決め事項を決めたものです。契約はこの「約款」に基づいて行います。第1条から第18条までありますが、業務の進め方から著作権の帰属、秘密の保持、業務報酬の支払いといった一般的なことから解除権の行使、紛争の解決といった契約途中での終了の方法やトラブルがあったときにどのように解決するかということが規定されています。
工事請負契約と違い、設計段階では建物は完成しないのでやり直す際には軌道修正ができるようにあらかじめ定められています。一方で委託者(お客様)にも設計が円滑に進むように努力する(どんな建物が建てたいのかを一緒に考える)義務も記載されています。
重要事項説明書
業務委託契約書の重要な部分を別書面にしたものです。契約に先立って説明することが建築士法で定められています
内容は下記となります。
- 業務を行う設計事務所の情報
- 対象となる建築物の概要
- 作成する設計図書の種類
- 工事と設計図書との照合の方法及び工事監理の実施の状況に関する報告の方法
- 設計又は工事監理の一部を委託する場合の計画(他社と共同で設計を行う場合のみ)
- 設計又は工事監理に従事することとなる受託者登録の建築士事務所(〃)
- 報酬の額及び支払の時期
- 契約の解除に関する事項
設計監理業務委託契約書
重要事項説明書と同じ項目ですが、基本設計と実施設計の業務を行う期間や、設計図書の種類、オプション業務といった1つ1つについて細かく記載されています。詳しくは打ち合わせの中で事前に説明が可能です。
中村まり子
最新記事 by 中村まり子 (全て見る)
- 自宅と設計事務所 完成見学会 その4 - 2016年12月24日
- 自宅と設計事務所 完成見学会 その3 - 2016年12月22日
- 自宅と設計事務所 完成見学会 その2 - 2016年12月21日